東京大学先端科学技術研究センター(経済安全保障インテリジェンス分野)の井形彬特任講師が編著を務めた論文集が、米国シンクタンクPacific Forumの公式ウェブサイトに掲載されました(2025/9/4)。
本論文集は『分断する世界における経済安全保障と偽情報』と題され、『Issues & Insights』誌(Vol.25 SR3)として発行されています。世界各国から選抜された7名の若手・中堅の専門家が、経済安保・偽情報対策をテーマに寄稿した論文を収録しています。
論文集はこちら(Pacific Forumウェブサイト)からダウンロードできます。
イントロダクション(抜粋)
「世界は大きな地殻変動の最中にある。かつて価値の共有や安定への道と見なされていた経済的相互依存は、いまや戦略的な負債と捉えられ、各国は過度な依存を避けるためにサプライチェーンや市場の多角化を進めている。かつて相互理解を促す原動力として称賛されていた情報の拡散は、いまや偽情報や影響力工作が自己選択的な情報空間でうねる戦場となり、社会を複数の現実へと分断している。大国間競争は激化し、安全保障と経済と情報の境界は曖昧になりつつあり、公的部門と民間部門の役割分担は根本的な再定義を迫られている。
本書には、こうした変化の最前線で取り組む新進気鋭の研究者や実務家による、政策志向型の7本の論考が収められている。本書が扱うテーマは大きく二つ、経済安全保障の追求と偽情報への対応であり、これらは先端・新興技術の進展によって形作られる非伝統的安全保障の一形態であると同時に、国家が戦略的優位を得るために用いる手段として重要性を増している。
本書の寄稿は単に問題を指摘するだけでなく、急速に変化するインド太平洋地域、さらにはその先を念頭に置き、具体的で実行可能な知見と提言を提示する。地域各国の次世代を担う声を取り上げることで、各章は新鮮な視座を提供し、今日の予測困難な国際環境において、経済力と情報力がいかに行使され、そしていかに抗されているのかをより深く理解する助けとなる。」
目次
序論-井形彬
第I部:経済安全保障における新たな課題
- 日米韓協力の新たなアジェンダ:造船能力強化に向けた三か国協力-Lea Thome
2. 金融の武器化と多角化:中国、mBridge、そしてグローバル・パブリック・グッドとなる可能性-Wenjing Wang
3. 民間の戦略的利益を国家経済安全保障に統合する:重要産業における米中ケーススタディ-Sae Kobayashi
4. 豪州の太平洋島嶼国への気候関与:地域のニーズに即した政策調整-Genevieve Donnellon-May
5. 戦略としての主権:地政学競争下でヤップ島の主体性をどのように主張するか-Axel J. Defngin
第II部:偽情報、ナラティブ管理、民主主義のレジリエンス
6. フィリピンにおけるフェイクニュース規制と表現の自由:真実は裁かれるのか-Josiah Patrick P. Bagayas
7. 中国メディア戦略のフレーミング:南シナ海問題をめぐる『環球時報』報道(2024年6月~12月)-Nguyen Phuong Thao

